クリエイター以外も参考になる「クリエイティブの授業」/読書記録

2021年8月23日読書感想・レビュー

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今日は、私の大好きな本。
お仕事だけでなくプライベートでも、プレッシャーを感じやすい私の心を軽くしてくれた本の紹介をします。

クリエイティブの授業
タイトル:クリエイティブの授業 10TH ANNIVERSARY GIFT EDITION
著者:オースティン・クレオン
翻訳:千葉敏生
発行:実務教育出版

クリエイターやクリエイティブ職を志す人以外はちょっと手を伸ばしにくいかもしれない、「クリエイティブの授業 “君がつくるべきもの”をつくれるようになるために」というタイトル。
でも中身は他のお仕事にも、そして「豊かな生き方」の参考にもなるような、全ての人にパワーを与えてくれるような素敵な本です。

「オリジナル」という言葉にプレッシャーを感じる方、仕事や何かのために趣味や好きなことを捨てなければと悩んでいる方、「好き」を見失いがちな方は特に、読むと心が軽くなる本だと思います。

クリエイティブの授業

著者はオースティン・クレオン氏。作家でアーティストで講演家の方です。
ニューヨークタイムズのベストセラー作家で、本作もそのベストセラーリストにランクインしています。

英題が「Steal Like an Artist」というこの本、新しい本ではありません。初版は2012年と、今よりもう10年近くも前にこの世に出されたものなんです。

参考書の多くは、「昔のもの=古くて役に立たない」「新しいもの=参考になる」というイメージが尽きがち。
でもこの本はかなり前のものとはいえ、現代で読んでもハッとさせられることがありました。
そして一度読んで終わりというよりも、ふとしたときにパラパラ読みたくなるような、長く付き合いたい本です。

裏面には本書で行われる「クリエイティブの授業」の項目10個が紹介されています。
中身はイラストや写真などもふんだんに使われていて、絵本のような感覚で気軽に読める本です。
最初から最後までハッとさせられたり、なるほどと思うことがあったのですが、今回は個人的に特に心に残ったところを記します。

「オリジナル」なんてない

クリエイティブ職に限らず、人は何に対しても「オリジナル」というものに価値があると思いがち。

オリジナリティこそが素晴らしい。人の真似はNG。
そんな考えが、世の中にはびこっているように思います。

だから何かを作るとき、企画をするとき、ほとんどの人は大きなプレッシャーを感じるのではないでしょうか?
人とかぶらないようなアイデアを考えなきゃ。
今まで誰もやってこなかった何かをしなきゃ。
自分にしか思いつかないものを見つけなきゃ。

でもそれはとてもとても難しいこと。いい案が思いついたと思っても、結局は既に世に出ていたり、どこか似通ってしまっていたり。
そうして「オリジナル」が何も思いつかないでいると、「自分には向いていないんじゃないか」とガッカリし、他の人が優れたアイデアを出したりしたら、「自分はダメな人間なんじゃないか」と思い込むようになってしまったり……
そういう経験はないでしょうか?

私はあります。今でももちろんですが、多感な小学校高学年くらい、グループワークなどでまわりと自分を比べはじめたあたりから、大いに悩んでいた記憶があります。
自分がやりたいと思っていたことでもプレッシャーに耐えられなくて、逃げるように諦めてしまうことがありました。

本書ではそんなプレッシャーに押しつぶされそうな人を救ってくれる、こんな言葉が紹介されています。

何かを"オリジナル"と呼ぶやつは、十中八九、元ネタを知らないだけなんだ

ジョナサン・レセムの言葉(本書本文より)

オリジナリティとは何か?バレない盗作である

ウィリアム・ラルフ・イングの言葉(本書本文より)

「オリジナル」なんてものはない。だから「オリジナル」を求めるなんて不可能なんです。

もちろん一つの作品から全て真似て作ったものは「盗作」になってしまいますが、多くの作品を元にして、それに自分なりの表現をプラスすれば、それはもう自分の作品。
成功しているアーティストはみんな「他人の影響を避ける」のではなく、「他人の影響を受け入れる」のだと知り、すっと心が軽くなりました。

考えてみれば、「無」から「何か」を生み出すなんて、そもそも不可能。種がなければ植物は育たないし、両親がいなければ私も存在しません。
発想や考えなどの「目に見えないもの」でもそれは同じ
ついつい妄想しちゃう憧れの人生は、大体映画やテレビで見たものの組み合わせ。ついつい空想しちゃうファンタスティックな世界は、大好きな漫画やゲームの組み合わせ。それを知らない世界で過ごしていたら、今みている「自分だけの妄想や空想の世界」は生まれていません。
ごくごく当たり前のことなのに、盲点でした。

アイデアのつくり方」という、本作とは別のお気に入りの本があります。
その本は平たくいうと「アイデアは“既知のもの”と“既知のもの”の組み合わせから生まれる」ということを紹介してくれます。

本書とあわせて、結局まずは知ること・触れること・経験することが大事だなと改めて感じました。

「好きなこと」が大事

何かを作るとき・何かをするとき、色々考えすぎてしまうことはありませんか?
私の場合は、特に最近なんとなく悩んでいたことがあります。実は、このブログのこと。

ブログを見にきてくれている人たちが読みたい記事ってなんなんだろう。
このネタは需要が少なそうだし、書きたかったけど書かないほうがいいかな。
私に興味もってる人が見てるわけじゃないんだから、ただの日記はちょっと控えた方がいいかな。

……趣味で始めた個人ブログなのに、見てくれる人が増えてくると、変に色々と考えてしまうんです。
「なんでも記録する」として始めたブログ。自分の書きたいことを書くのが楽しくて、何も考えずにいたときは毎日更新。多いときは一日で3記事もアップすることがあったのに、最近は下書き記事だけがどんどん溜まっていく状態でした。

そんな私には「知っていることではなく好きなことを書こう」という授業で、自分を縛り付けていた何かから、解放されたような気がしました。

私が作曲をしてきたのは、自分自身が聴きたい未知の音楽を作るためだ。私は音楽家という仕事がしたかったのではない。

ブライアン・イーノの言葉(本書本文より)

もちろん世の中、「好きなこと」だけじゃ生きていけない。それだけでやっていけないというのは事実。
でも、自分が「好きなこと」からパワーがもらえることもまた確実なこと。

変に考えてこだわることで大事なものを見失っていたようです。

本業以外も大切に

いくつかの仕事を同時進行させて、切り替えられるようにしておくといい。こっちの仕事に飽きたら、あっちの仕事へ。“ぐずぐず”をエネルギーに変えよう。

著者の言葉(本書本文より)

令和は「副業」ではなく「複業」が主流になる、という言葉を最近耳にしました。
それを踏まえた上で読んだので、2012年にこの考え方をされていたのは、ちょっと衝撃。

私は現在フリーランスで、「あれもこれも」とやりたくなっちゃう性分だから、まさにこの切り替え状態。
記事制作をして、コンテンツ制作をして、サイト運用をして、アシスタント業務をして……煮詰まってきたらデータ入力や事務作業なんかも受注して。

自分的には気分転換にもなるし、他のお仕事から得られる気付きが別のお仕事に生かされることも多いので、生き方としては満足しています。

でもやっぱり、これでいいの?と思うことも。
ひとつのことを突き詰めてやる人には技術が到底敵わないし、苦戦することもしばしばあります。
期間があいてしまうと、久しぶりにやる作業は最初ちょっと忘れています。
人から職業を聞かれたとき、大体一番割合が多めの「Web制作関係です」と答えるけど、数ヶ月Web制作に触れていないこともあるのでモヤっとした気持ちになります。

でも、この切り替えによって生まれる「魔法」もある。それぞれを相互作用させることで、起きる何かがある。
もちろん、しっかり考えないといけないこともあるけど、この授業でも心が軽くなりました。

未来を見て点をつないでいくことはできない。後になって初めて、つながっていたとわかるのだ

スティーブ・ジョブズ(本書本文より)

この授業で大切なのは、仕事だけじゃなく、趣味もそうだということ。

仕事に集中しないといけないから、好きなことを捨てなければならない……そんなことはないんです。
趣味から得られるものがある限り、思いもよらないところで魔法はきっと生まれるはず。

公開ファンレター

友を作って敵は無視。友を作るには褒めることが大事。そして褒められ帳をつけよう。「他人には親切に(世界は小さな町だ)」の授業での言葉です。
この授業では、「公開ファンレターを書こう」という提案があります。

要約すると、ファンレターは相手に返信のプレッシャーを与えてしまう。でも純粋に好きなら、返信なんていらないはず。
だからブログを始めて公開ファンレターを書こう。相手が見てくれるか分からないし、返信が来るか来ないかも分からない。
大切なのは見返りを求めず、相手に称賛を示すこと。

これを読んで、私は思わず「おっ!」と声が出ちゃいました。なぜなら共感しかなかったから。

私のブログの多くは、公開ファンレターのつもりで書いています。
たまにアクションいただくと飛び跳ねるくらい嬉しいけど、純粋に好きだから書いているだけなので、返信や見返りは求めていません。

美味しい食べ物が好き。楽しいイベントが好き。
うつわが好き。水耕栽培が好き。ゲームが好き。映画が好き。本や漫画が好き。
京都が好き、関西が好き。石川が好き、北陸が好き。住みやすいまち「野々市」が好き。
優しくて温かい人たちが大好き!
好きなものへの気持ちは公開ファンレターとして、これから先もどんどん書いていきたいです。

ちなみにこの記事は、オースティン・クレオン氏への公開ファンレター。
I love this book. And I respect you very much!

まとめ

もっと早く出会いたかったクリエイティブの授業(STEAL LIKE AN ARITST)。

内容に大満足な本書ですが、千葉敏生氏による翻訳も素敵でした。
フランクな雰囲気、友達のように読者に語りかけるような言葉だったからこそ、スッと心に染み入った気がします。

10個の授業それぞれ、人によって解釈や受け取り方は異なると思います。もしかしたら私が本記事で記したようなことを感じない人もいるかもしれません。
「自分なり」に納得できる答えを見つけられる読み方もできる、それもこの本の素敵なところだと思います。
オースティン・クレオン氏も、読み方に「ルールはなし」とされていますから。

行動や考え方をすぐにガラッと変えることは難しいけど、ちょっとずつアドバイスを取り入れて、軽やかな心で前に進んでいきたいです。
とりあえず、深く考えずにいろんなことを知ろう。そしていろんな経験をしよう!